『プリティー・ロック』 作者:牧野和子 原作:後藤ゆきお 掲載:「週刊少女コミック」昭和48年5号〜26号
というわけで、以下、ご紹介したいもうひとつの牧野和子さんの作品 『プリティー・ロック』。 こちらは短めに・・・・・ (と思っていたけど長くなってしまったよ(^^;)。 私って要領まとめるの、ニガテなのよね〜。トホホ)。
アメリカのテキサスの田舎・ストロベリー村で生まれ育ったプリティーは、 サイドトップで結んだ三つ編みにソバカスの明るい女の子。 両親が幼いころに離婚して、父親に育てられました。 が、父親が森林事故で亡くなり、亡くなる寸前、父親から 「おまえの母親はNYにいる」と聞かされたプリティーは、デザイナーを 目指してNYに上京します。 プリティーの母親・シンシア・ロックも、かつて、デザイナーを目指して 田舎を出て行ったのです。
母親にいつか会えるのではと、まずはどうやって探すかを考えるうち、 小さなブティック「ベティの店」でお針子さんとして雇われます。
ううう、全3巻のうち、1巻がどこかへいってしまい(T_T)、 うさぎのミミとどうやって知り合ったかがあいまいなんですが、 ストロベリー村から連れてきたんだったか、 道でバイク(車かも?)にひかれたミミを手当てして、 飼うことになったんだったか・・・・(後者かな。なんか「独り者同士、 仲良くやるだべ」みたいなセリフがあったような、なかったような・・・)。 とにかく、うさぎのミミと一緒に、ブティックに住み込みで働くことに なったのです。
プリティーは田舎生まれなので、「だべ」という接尾語で話します(笑)。
そのうちに、NYの名門洋裁アカデミーのフランソワーズデザイン学院に 入学できるチャンスがやってきます。 フランソワーズは今アメリカで最も有名な女性デザイナー。 そこへ入学できるとあって、プリティーは大喜び。
入学試験が確かあったと思いますが、そこでは田舎者のプリティーは 浮きまくりですが、同じく浮いた存在だったのが、いかにも不良っぽい マック・ジャガーという男子でした。
ところが、ふたりとも異色ながら才能があると認められ、合格するのです。 マックは満点をとっての合格。 こんな不真面目で下品な男子が?!と誰もが驚くのでした。
マックはプリティーがNYにきたころに知り合い、すぐ風変わりな プリティーと気が合い、気に入っていました。 マックは学院で勉強するのなんてくだらない、といい放ちます。 (でも合格したのにほとんど通学してなかったような・・・正式には 入学しなかったのかな?ショーの時には来てたんだけど。 この辺、記憶があいまいです) 彼には隠された目的があったのです。
そしてフランソワーズにも秘密が。 実は、プリティーを捨てた実の母親こそがフランソワーズ。
シンシア・ロックから、フランソワーズへと名前を変えていたのでした。 フランソワーズはプリティーについて、その苗字や出身地から、 自分の捨てた娘だと、早くも気づいてしまいます。
それもあって、冷たいながらも、何かとプリティーを特別扱いするのです。 才能も財力もあるローズマリーをはじめ、ライバルの生徒たちは、 それが面白くなく、どうにかしてプリティーを退学に持ち込もうと あれこれしますが、マックや、プリティーに惹かれるオシャレなお金持ち・ ピーターが邪魔をして、なかなかうまくいきません。
そうこうするうちに、フランソワーズ学院のショーの日が来ました。 記者も呼び、話題性の高いショーになるはずが、突然真っ暗闇になり、 「ブラック・ナイト」という謎の黒服の仮面の男が現れ、アングラな ロックファッションを中心とした、全く違うショーを行なってしまうのです。 ショー・ジャック、というのでしょうか?
プリティーはブラック・ナイトの才能とセンスにすっかり惹かれて しまいます。 そして翌日の新聞には、ブラック・ナイトへの賛辞が並ぶのです。
軽薄で下品なショーにのっとられてしまったフランソワーズは ショックを受けます。
このころ、まだ「ベティの店」に下宿しているプリティー。 そのデザイン画を見たベティの妹・サマンサは、その作品を 店のオリジナル商品として売り出すことを考えます(もちろん悪意)。
この話の前に、フランソワーズ学院に合格したプリティーを 手放しては困る、と、ベティとサマンサは、高級な(←ウソ)壷をわざと 割り、うさぎのミミがしでかしたことだとプリティーに詰め寄ります。 1千万ドルの代金分、これからも店で働くように命令するのです。
うさぎのミミはプリティーに叱られたことでショックを受け(おぃおぃ笑)、 家出してしまいますが(こらこら笑)、そこをマックに助けられ、 また、壷がただの安物だということもバレ、マックもベティ&サマンサ姉妹 に文句を言ってくれるのですが、それでも初めて雇ってくれた店だから、 と、この店にい続けることをプリティーは決心します(勿体ない・・・)。
しかも、プリティーのデザインを「ベティの店」のデザインとして売り出し、 その洋服は大繁盛。 プリティーは、店に学院にショーの手伝いに・・・と多忙な日々を送る のでした。
そんな中、ふとしたきっかけから、マックは、プリティーの母親・ シンシアが、フランソワーズであることを知ります。 実はマックの母親・カトリーヌもまた、かつて天才デザイナーといわれた 女性で、フランソワーズの恩師でもありました。 フランソワーズは、カトリーヌの作品を盗作し、自殺に追い込んだ過去が あり、マックは母親・カトリーヌの復讐のため、「ブラック・ナイト」として フランソワーズをファッション業界から追い込む決意をして育ったの です。 その憎いフランソワーズがプリティーの母親とは・・・。 マックはもう、プリティーに優しく接することができないのでした。
突然わけもわからずマックに無視され続けるプリティーは、やがて、 プロポーズをしてくるピーターとの交際を考え始めます。 (「ステディになっておくれよ」なんてセリフがあって、何じゃステディって? と思わぬ英語に出会い、幼心に引っかかり、調べて覚えた私です(笑))
ピーターを好きだったローズマリーはショックを受けますが、一方で マックの才能を見直し、次第にマックに惹かれていきます。
そしてまたフランソワーズのショーの日が近づきました。 同じ日に、ブラック・ナイトもショーをやると言う宣伝がばら撒かれます。 プリティーは、偶然、ブラック・ナイトの仲間の話を耳にし、 ブラック・ナイトの正体がマックだったことを知るのです。 また、ローズマリーからは、フランソワーズの正体も知らされるのでした。
ショーはブラック・ナイト(=マック)の圧勝で、どのメディアも ブラック・ナイトを称賛する記事であふれかえります。 フランソワーズはその衝撃から、倒れてしまいます。
母親がフランソワーズだったことを知ったプリティーは急いで看病に行き、 そこでやっと母娘として、認め合える日が来たのでした。
ところが、いざ認めてみると、フランソワーズはプリティーを後継者として、 盛大な発表をしたり、パーティーをしたりと、振り回すばかり。 プリティーの方言を直させたり、礼儀作法を学ばせたり、と、 デザインに関係ないことばかりやらされる日々が続きます。 ピーターとの婚約話も進んでしまい、社交界へとデビューしていく中で、 プリティーは、本当の自分の気持ちに気づくのです。 本当はマックが好きなのだということと、自分がやりたいファッションは こんな洗練された華やかなものじゃない、ということに・・・。
しまいに、フランソワーズはまた汚い手段を考え出し、プリティーの ブランドを使って、ブラック・ナイトを業界から追い込むことに成功。 これがきっかけで、ついにプリティーは、親子の縁を切る決意を固め、 家を出て、マックやその仲間と共に、NY以外のところで活躍しよう、 と旅に出るのでした。
フランソワーズの身体は、プリティーに縁を切られたショックで ますます悪化。 彼女はもう、脳腫瘍で長い命ではなかったのです。
マックとプリティーの若者らしいフレッシュな感性の斬新なファッションは 西海岸などの地方で受け入れられ、話題になっていきます。 その記事を見るにつれ、フランソワーズはやっと、自分のポリシーが 間違っていたと、心を入れ替えていくのでした。 そして、自分達の力で新しい時代を切り開いているプリティーたちを、 誇りにすら思うようになっていくのでした。
そんな中、かつてピーターにも振られ、デザインの才能も及ばず、 次の恋だと思っていたマックにも振られ、 全てをプリティーに奪われてしまった傷心のローズマリーが、 プリティーたち一団を追いかけ、テントや作品の服に放火してしまいます。 そのまま自殺するつもりでしたが、マックが身を挺して、火の中から 救い出すのでした。
大怪我を負ったマックとローズマリー、プリティーは和解しますが、 そこへ仲間の一人が、フランソワーズに発作がおき入院したらしいと 知らせに来ます。 親子の縁を切ったんだから、会いにはいかないというプリティー。 ところがマックのほうから説得され、プリティーはマックと共に、 バイクでフランソワーズの元へ向かいました。
病室で、もう2度と娘には会えないと諦めていたフランソワーズの前に、 ふたりの姿が。 「オレはもう憎んじゃいねーよ。なんたってオレたちのママだもんな。 オレとプリティーが結婚すりゃあ、ふたりのママだろ?」 「(結婚?あぁ、このふたりが結婚するなんて・・・・・)」 プリティーだけでなく、自分を憎んできたあのマックとも和解できた フランソワーズは、初めて、プリティーを優しく素敵な子に育ててくれた 別れた夫に感謝するのでした。
「ストロベリー村のことを考えていたの」 病室でそうつぶやくフランソワーズの言葉に、マックとプリティーは、 ストロベリー村にフランソワーズを連れて行くことにします。 彼らはフランソワーズの余命がもう1週間ともたないことを知りません。
旅は無理だと知りつつ、医者に口止めをして、ストロベリー村に向かう フランソワーズを待っていたのは、久しぶりに見る田舎の光景。 懐かしい家の窓からは、ストロベリー村全部が見渡せる・・・・・ その窓際に立つフランソワーズには、もう窓の外の風景が見えず・・・。 「ちょっと眠くなっちゃった。ぼうや、おばちゃんを一人で眠らせてね」 部屋で一人、番をしていた村の子供にそう告げると、フランソワーズは ベッドに横たわります。 窓の外では、小鳥のさえずりと、朗らかなプリティーたちの笑い声が 歌うように流れてゆくのでした。
う〜〜〜〜ん・・・連載ものは短く説明できないことがよ〜くわかりました。 やっぱり分けてよかったなー・・・・・(-_-;)。 こちらの作品も捨てがたいくらい好きなお話です。
何しろ、ファッション業界の話なんて、やっぱり華やかだし、そこを 田舎者の女の子が夢をあきらめずに才能を磨いていって、 個性を失わずに道を切り開いていく・・・この展開が爽快でした。
右も左もわからないNYという都会で、最初はうさぎのミミだけが 友達なんですが、やがてマックやピーターが支えてくれるようになるのも、 読んでてホッとするものがありました。 マックも魅力的なんですけど、ピーターも捨てがたいっ!(笑)
途中、ベティの店の姉妹や、学院の先輩・生徒達からのイジメシーンは、 かなりハラハラして、なんだか堀ちえみのドラマを見ているような気すら してくるのですが(笑)、(あ、そーいえば「花嫁衣裳は誰が着る」って デザイナーを目指すヒロインを堀ちえみが演じてましたっけ。 でもあのドラマよりも迫力あるイジメシーンなんですよね。 なんたってフランソワーズ自身もプリティーにバケツの汚れた水を ぶっかけちゃったりするんですから) マックと旅に出るあたりから、すごく気持ちのいい物語になって いきました(ってほとんど終わりのほうだけど^^;)。
でもどんなにイジメられても、かなり天然さんで、すぐ前向きになれる、 たくましいプリティーだったので、明るく読めるお話でした。 まさに一陽来復人間って感じで(笑)。 そこが堀ちえみとはちょっと違うところで(比べるのもどうか、という感じ なんですけど)、もしこのお話をいまドラマ化するとしたら、そうだなぁ、 スザンヌあたりがちょうどいい感じがします(笑)。
あと、うさぎのミミが可愛かったな〜。
また、この作品の特徴としては、ショーやプリティーが着るファッションの デザインを、読者から募っていたことです。 なので、服の横に「○○さんの作品」と、一般読者の名前があちこちに 出てきます。 読んだ当時は、みんなすごいな〜、デザインが描ける人って世の中に こんなにいるのかぁ〜・・・・と、ひたすら感心感心。 いま見ても、可愛い服ばかりなんですよね〜〜。 プリティーの髪型が、途中から可愛くなっていったのもよかったです。
旅の途中で出てくる緑豊かなキャンプ地も、最後に出てくる ストロベリー村も、その緑のにおいや風のそよぎ、小川のせせらぎが 聞こえてきそうな絵柄で、あのころのアメリカン・カントリーを描かせたら 右に出る人はいなかったんじゃないでしょうか。 実際私は、これを読んでアメリカの田舎にあこがれた、という人を 何人か知っています(笑)。
あと、私が特に印象に残っているシーンは、プリティーがマックたちと 旅に出た後、仲間のうちの一人で、ボーイッシュでジプシーのような、 ちょっと危険な感じの女の子(ジャッキーとかいう名前だったかな?)から だけは、なかなか受け入れてもらえないところです。 彼女はプリティーを、みんなにコビを売って人気稼ぎをしている、と 捉えるのです。 例えば、プリティーはイチゴの葉っぱなどの草木染めをみんなに教えて、 「ほれ、綺麗な若草色に染まったべ?」なんていいながら(笑)、 感心されたりしているわけです。 料理も得意で、「こんな子を嫁さんに出来る男は幸せだ」などと、 マックとの将来をみんなにからかわれたりもします。 そんな光景が面白くないのです。 「あとから仲間に入ってきたくせに・・・・点取り虫!」と思うわけです。 そんな中、地方で行なうショーのチラシ刷りをその子とプリティーが 担当するのですが、多忙のあまり睡魔が襲ってしまい、その子だけが 眠りこけてしまいます。 朝になってあわてて机から飛び起きると、肩にはジャケットが かけられていて、大量のチラシは全て刷り上っています。 窓の外を見ると、プリティーはもう朝食を作ったりしています。 そのバイタリティと優しさに、彼女はプリティーをようやく受け入れることが 出来た、というシーンです。
彼女のロックファッションもカッコイイし、プリティーが草木染めをする シーンのファッションもすごく可愛くて、どちらもあこがれました。
プリティーってソバカスがあるんですけど、そういえば「キャンディ・ キャンディ」のキャンディにもソバカスがありましたね。 アメリカの田舎の女の子ってそんなイメージだったのでしょうね。 「大草原の小さな家」とかの影響なのかな。
それにしても、マック・ジャガーって名前、ミック・ジャガーのパクりです よね、たぶん(笑)。 「ロック」という言葉がつくタイトルの作品が、牧野さんのもので 他にもあったと思うのですが、ロックが好きだったんでしょうか。 どの作品もいろんなシーンで、セリフが歌になっていたりしましたが(笑)。 そーいえば『あの娘はだあれ?!』の中だったか、 「♪一人が好きなの一人っ子〜、ホントはウソなの甘なっと〜」 っていう歌詞が出てきて、浅田美代子さんの歌のパロディだというのを 知ったほうがあとだったくらいです(笑)。 ですから「ひとりっこ甘えっこ」を聴くと(あまりそんな機会ないけど^^;)、 つい「♪ホントはウソなの甘なっとぉ〜〜」と歌ってしまいます。
この作品の原作者の後藤さんって、確かご主人だったと思います。 でも牧野さん自身は、確か、漫画家だったお兄さんを頼って上京した という記憶があるので、お兄さん??? いやちがう。確か後藤さんはご主人だ(と思う)。どうでもいっか(笑)。
『そよ風ロック』『プリティー・ロック』、どちらも、短編が同時収録されて いるものがあります。 『ナナは花』というお話がけっこう好きでした。 たぶん登場人物の名前からいって、舞台はフランスの田舎町だと 思うんですが。 ラストがいいんですよ〜。弟、そうか、そういうオチか〜〜〜、とホロリ。 ラストのモノローグが最っっっ高に素晴らしいです!!!
ところで牧野さんって、里中満智子さんのアシスタントをしていたことも あるらしいんですね。 あまり絵柄が似ているとは思わないんですけど、言われてみれば、 里中さんの「なかよし」時代の『しあわせですか?』あたりの絵柄が 輪郭とか、少し似ているような、似ていないような・・・・。 (そーいえば里中さんの’70年代ので『レディー・アン』なんて、 デザイナー関連の作品があったなぁ。でも作風は全然違うわ・・・) で、『ナナは花』とか『愛はいま・・・』あたり、里中さんも描きそうな 設定なんですけど、牧野さんが描くから、救いがあるラストになってる 気がします(笑)。 里中さんが描くと、きっと悲劇になっちゃうんだろうな〜〜〜、みたいな。 悲劇を読むなら里中さん、喜劇(?)を読むなら牧野さん、って ところかな?
とにもかくにも、’70年代初頭の牧野さんの絵柄は、やっぱり可愛い! 描線がキレイ!上手!でもって、ストーリーも面白い!! 『あの娘はだあれ!?』とか『うまれちゃったの?』なんて、 ありえないでしょ(笑)、なお話なんだけど、そこがまた良いのですっ!! どーしてwikiにもほとんど詳細が載らないくらい、語られない御方なの でしょうか??? ワタシのイメージとしては、昔の「少女コミック」というと、牧野さんか 岸裕子さんなんですけど(歯医者に行くと、棚に置いてある「少女コミック」 には、必ず岸さんのマンガが載ってました(笑))。 ↑ こーゆー人もいるんですのよ、世の中には。
不思議不思議。
<追記(2010年5月8日)>
上で「どーして語られないのよっ!」などと熱く語っていた矢先、 こんなニュースが。
「社団法人日本漫画家協会」なるものがあるらしく、 こちらで2010年度の漫画家協会賞の募集&選考があったそうです。 選考会は5/7だってさ。昨日じゃないの(笑)。 すごい最新のニュースを手に入れちゃったよ。
で、この賞を選ぶ選考委員14人の中に「牧野和子」さんの名前が!!! ちなみに委員長が「やなせたかし」さんで、 その他の委員には「みつはしちかこ」さん、「中山星香」さん、 「矢口高雄」さん、「永井豪」さんなどの名前が。 (中山さんが入るなら、そろそろ岸さんが入ってもいいんじゃない?笑)
しかも、受賞者の一人「文部科学大臣賞」を受賞されたかたが 伝説の漫画家「水野英子」さんでした!! すごーーーーーーいっっっっっっ!!!!!!!
以上、牧野和子さんニュースでした(笑)。
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