『そよ風ロック』
作者:牧野和子 掲載:「週刊少女コミック」昭和47年40号〜?
え〜〜〜〜〜〜と・・・・・・・・『そよ風ロック』と『プリティー・ロック』、 どちらかをメインにしようと思ってたんですけど、選べませんでした(笑)。 この2作は甲乙つけがたく。 というわけで、いっそのこと、2作まとめてご紹介します。 (あらすじだけで、ご紹介ってほどのこと、いつも書いてないけど(苦笑)) 『プリティー・ロック』は次のページでお楽しみ(?)ください。
それにしてもこれ、どちらもすっごく古い作品なんですね〜〜。 例のごとく、子供のころにすでに本棚にあったものです。 例によって、姉のコレクションのひとつだと思います。 でも私の姉って執着心が全くないので、コレクションだとは思ってないと 思いますけど(笑)。
ちなみに、『そよ風ロック』が全2巻、『プリティー・ロック』が全3巻です。 (我が家にあったのは「若木書房ティーンコミックス」です)
私が先に読んだのが『プリティー・ロック』のほうだったんで、 こちらが先に描かれた話かと思ってたら、調べたら逆でした。 というわけで『そよ風ロック』から・・・・。
その前に、この作品の前作で牧野さんが連載されていたのが 何とあの「なんたって18歳!」だったのですよ!!! 知らなかったなぁ〜〜〜〜〜。 岡崎友紀さんのドラマのでしょ?違うかしら??? でも1971〜72年連載だから、時代的には合ってるような・・・。 バスガイド(旅行代理店?)のドラマでしたっけ。 夏夕介さんが変な男の役でね〜。 いやいやびっくり。
(なんて、このページを書いてアップして1週間も経っていないという のに、夏夕介さんがご他界!なんという偶然。 ぬぬぬぬぬ・・・・・・「特捜最前線」とか見てたから悲しいなー。)
それはさておき(汗)、『そよ風ロック』は、アメリカ・フロリダ州、 ロック市(シティー)という場所が舞台の学園ラブコメです。 ん〜〜〜、でも、ラブコメといっても、けっこうドラマチックなお話でした。
(以下に、いつものように、ストーリー詳細を書いているわけですが、 最近になって、古い漫画のダウンロードサイトにこの作品が追加された ようなんですね。 で、そこでのあらすじ文読んだら、ワタクシが書いてるのとほとんど同じ 表現が使われてて、笑ってしまいましたわ(笑)。 ここ見て書いたんじゃないかというくらいそっくりではないか(笑)。 ワタクシめの方が先です!!(鼻息) では、どうぞ。)
ロック学園一の不良でプレイボーイのレオが、ある夜、以前から レオに恨みを持っていた連中に睡眠薬を飲まされて、ケンカに 巻き込まれます。 そこを、たまたま同じ場所にあったゴーゴークラブ(←この言い方・・・) 「ラブチャイルド」に最近歌手として雇われたチェリーに助けられる ところから物語が始まります。
レオが目を覚ますと、そこはチェリーの楽屋で、香水のニオイが プンプン。そして厚化粧にカーリーヘアのチェリーが。 ゲッ、化粧お化け!と思うレオでしたが、助けてもらったお礼を言い、 そこを去るのでした。
翌日、レオが学校へ行くと、一人の転校生がやってきます。 それは、セシル・ハーシーという少女。 レオはたちまちセシルの可愛さ&清楚さに、虜になってしまいます。
ところがレオには、以前からもっぱら公認のカップルとされている、 リリアンという女番長のような(梶芽衣子さんのような(笑))彼女が いるのです。というか、リリアンはそのつもりなのです。 ですから、リリアンはレオの様子に面白くありません。
セシルは可愛いだけでなく、頭もよく、田舎の学校からきたのにも かかわらず、難しい数学をスラスラ解いてしまうほどの秀才でした。 レオを始め、男子達はますます虜に。
何とかセシルに気に入られようとがんばるレオでしたが、 セシルは全く相手にしません。 それどころかツンケンしていて、「暴力振るう人と頭の悪い人は大嫌い」 とはっきりレオに言い放つのでした。
でも、次第にレオの単純さにセシルの気持ちも和らいでいきます。
ふたりの進展に気分を害するリリアンは、うさ晴らしに「ラブチャイルド」 に踊りに行きますが、そこで、自分よりも踊りと歌で周囲を魅了する、 チェリーの存在を知るのです。 気分を害したリリアンはチェリーに一泡吹かせてやろうと楽屋裏で 出待ちをすることに。 ところが、楽屋から出てきたのは・・・・・・何と、制服姿のセシルだった のです!
実は、チェリーはセシルが化粧とカツラで化けた同一人物。 驚くリリアンに、焦ったセシルは「踊りに来たのよ!だってゴーゴークラブ でしょ、ここ?!」と言い切り、その場を逃れます。 とりあえず、リリアンにはバレずに済んだのでした。
急いで帰宅するセシル。アパートには姉が待っています。 セシルは学校では「パパンはイギリスで大学教授をしている」と クラスメイトに話していましたが、事実はそうではないのです。 セシルの秘密・・・それは、かつてバンドマンだった父親はいま、 麻薬密輸という無実の罪で服役しているのです。 もう何年も刑務所に入れられていて、セシルは、パパにいい弁護士を つけるためにお金を稼ぐため、年をごまかしてラブチャイルドで アルバイトをしていたのでした。 当然そんなことは、姉は知りません。 セシルは姉に心配かけないよう、一生懸命勉強し、いい子を演じて いる日々を送るのでした。
一方、レオは日に日にセシルに夢中になり、とうとうPTA会長もこなす 自分の父親に、正式に会ってもらうことにします。 父親もすっかりセシルを気に入ります。
レオがセシルを家に招待したことを知ったリリアンはショックを受けます。 リリアンですら招待されたことがなかったのです。 しかも、リリアンは、このことが起きる前に、これ以上レオとセシルが 関係を深めないよう、何とチェリーに、「二人を別れさせるために、 レオを誘惑してくれ」と頼んでいたのです。 チェリーはセシルなので、当然それは無理。
「チェリーのヤツ、誘惑できなかったんだ!」と頭にきたリリアンは、 不良仲間の男に、チェリーを一生舞台に出られない顔に切り裂くよう 命令します。 たまたまその話を聞きつけたレオはあわてて、以前自分を助けてくれた チェリーだからと、危険を知らせに向かいますが、 楽屋に行くと、現れたチェリーが、かつらをとって、あのセシルに変化 するのを見てしまうのです。 清純だと思っていたセシルが、厚化粧で踊り歌う、下品なチェリーだった と知り、レオはショックを受けます。
レオに秘密を知られたセシルも焦りますが、一方で、リリアンの 命令どおり、チェリーとしてのステージを終えたあと、待ち構えていた 切り裂きジャック(←これも時代を感じるなー・・・)に、顔ではなく、 足を切りつけられてしまうのでした。 (そこを運よく通りかかったレオの父親に助けられるのですが)
数日後、学園の女王の発表があり、セシルが選ばれます。 このことにもリリアンは腹を立てるのですが、記念パーティーでの ダンスで、セシルは普段ラブチャイルドで歌っている曲を うっかり歌ってしまい、その上、足の傷も見えてしまい、 リリアンや仲間から、正体がバレ始めてしまうのでした。
しかも、リリアンはその後セシルを付け狙い、セシルの父親の秘密も 突き止めます。 そして、学園内に全校生徒を集め、全てをバラそうと企てます。 いたたまれなくなったレオは、思いなおしてセシルをかばおうとしますが、 結局全てがバレてしまい、全校生徒の怒りは収まらず、ふたりとも、 停学処分となってしまいます。
PTA会長の息子のレオは期間限定、セシルだけが無期停学。 その間に、レオの誕生パーティーが開かれ、なぜかその日だけは パーティーのために外出許可が出たと、セシルは姉から聞かされます。
パーティーはヨットの上での船上パーティーでした。 最中、レオはセシルを秘密の部屋に案内します。 その部屋はレオの父親の秘密部屋で、鍵はレオと父親しか 持っていません。 セシルはそこで、一枚の写真に目を留めます。 レオの父親と、もう一人の男との写真です。 レオによると、その男はニールという、レオの父親の親友だという のです。 その顔と名前に、セシルの記憶が蘇ります。 ニールは、セシルの服役中の父親がバンドマンだったころ、サックスを 担当していた男だったのです。 そして、その部屋には、セシルの父親が愛用していたギターまで あったのでした。
ニールと、レオの父親が、セシルの父親の冤罪に何か関係している のではないか・・・と怪しむセシル。信じようとしないレオ。
ところがこの日、ニールもパーティーにやってきて、セシルの苗字を 聞いたニールもまた、奇妙な様子を見せるのでした。
数分後、パーティーには突然リリアンもやってきて、レオの親族達の前で セシルの父親が罪人だということをまたバラしにやってきます。 が、これは無駄骨で、レオの父親はもう全てを知っていたのです。 しかも、レオとセシルを公認の仲にするだけでなく、セシルの姉を 秘書として雇うことも発表します。 (いつの間にか、セシルの姉は、レオの紹介で、その美貌と性格・ 才媛振りを、父親に気に入られていたのでした。 レオの父親はPTA会長。しかも姉は父親のお気に入り。 だから、この日だけはセシルに外出許可が出たのです)
完全に失望したリリアンは、海に飛び込み自殺を図りますが、 セシルもまた飛び込み、危険を顧みず、リリアンを助けます。 病室で目覚めたリリアンは、セシルのひどい傷を見て、 それまでの心を入れ替えつつ、そっと病室を抜け出します。
一方、レオは自分の父親が、本当にセシルの父親の冤罪に かかわっているのでは・・・と疑いを持ち始めます。 確かめるため、父親の部屋に向かうと、ニールもいて、 ふたりはやはり怪しい様子です。 セシルが退院すると、レオは、あのヨットの秘密部屋に、もう一度 一緒に確認しにいくことにしました。
ふたりはやはりギターがセシルの父親のものだと確認します。 そのとき、秘密部屋に、ギターを処分しようとやってきたある人物が。 それは、レオの父親らしき後ろ姿。 男は二人の存在に気がつくと、船に放火しますが、自分もまた 逃げ遅れ、結局命を落としてしまいます。
幸い、ギターを振り回しながら逃げ切ることができたセシルとレオ。 が、あの後ろ姿はレオの父親。 父親が焼死してしまった・・・と絶望で泣き崩れる二人の前に、なんと、 その父親が元気な姿で現れたからふたりはびっくり。 あの後ろ姿は、父親の後姿によく似たニールだったのです。 そしてニールこそ、麻薬密輸をしながらその罪をセシルの父親に なすりつけた、真犯人だったというのです。
レオの父親は、この事件には一切関係がないこともわかり、 ふたりは一安心。 その上、父親とセシルの姉が、婚約することもわかり、またまたびっくり。
学園では、リリアンがまたセシルのことでひと騒動起こしています。 でも今度の騒動は、セシルを追い詰めるものではありません。 セシルの無期停学を解除してもらう運動を起こしてくれていたのでした。 やがて、リリアンの尽力で無期停学も解け、 セシルの父親の無実も証明され無事に釈放、 全員が幸せになり、この話はハッピーエンドを迎えます。
う〜〜ん、ラブコメなんですけど、やっぱりかなりサスペンスな要素も ありますね(笑)。 でも絵柄はとにかく甘〜い感じで可愛いし、全体的にはギャグも多い 楽しい作品です。
連載ものだったので、話はあっちこっちに飛んでいます。 ラブチャイルドで歌っていたことも途中で姉にバレたりしますし、 停学中のセシルの2階の部屋の窓に、レオが自力で登っていって、 感激したセシルが手料理をご馳走するのですが、激辛な結果だったり、 ラブチャイルドには、学園の風紀係とも言えるバーカー先生(男)が チェリーに惚れ込みこっそり通っていたりと、 まぁいろいろなエピソードがありつつ、うま〜くまとめられています。 セシルがレオをつれて、刑務所の父親に面会に行き、ふたりの仲を 父親が泣きながら喜ぶシーンは感動的です。
やっぱり牧野さんは、ストーリーの展開が上手というか、素晴らしいです。 モノローグもうまく取り込んでいるので、登場人物たちの一人ひとりの 心の動きもよく伝わってきます。 特にリリアンの心の動きは最後までわからず、ホロッとさせられるし、 全体を通してみると、一番かわいそうでもあるし、一番「粋」な子だと 思います。
牧野さんは私の中のイメージは、やっぱりアメリカの学園もの、という 感じです。 ’80年ごろになると「ハイティーン・ブギ」で大ブレイクしましたが、 昔を知るファンは、ハイティーン・ブギは牧野さんの真骨頂じゃない!! なんて思うんじゃないでしょうか。 絵柄も全然変わってしまいましたし。 私なんて、最初、同姓同名の別の漫画家さんだと思ってましたもん(笑)。
ハイティーン・ブギも最後は何だかドロドロの悲劇で終わったようですが、 これの他にも、田舎から出てきたちょっと頭の弱い女の子が、 あっさりと知り合った男と同居して、妊娠するのですが、 彼は「子供のためにもしっかりしなきゃな」とか言いながらマジメに なるのですが、ケンカ沙汰だか事故だかで死んでしまい、 彼女も流産して・・・(いや、生まれたんだけど、彼女は彼の死を知らず、 ノー天気に彼の帰りを待つんだったかな?)、 なんて救いのない話があって、読まなきゃよかった・・・・と、 かなり鬱な気持ちになりました(苦笑)。 でもこういうのが好きって人もいたから、描いてたんでしょうけどね。
私はやっぱりこの’70年代初頭の、ミニスカートやフォークロアな ファッションをふんだんに取り入れた、ファッショナブルで カントリー・アメリカンな、オシャレな作品が一番面白かったな〜〜 と思います。 ちょっとロマンティックで。 しかもギャグもほどよく入ってくるという。 ギャグの時は、みつはしちかこさん風な絵柄になってみたり(笑)。
いま読んでも、セシルの可愛さは変わりませんね。 髪型なんて、いま流行っているような雰囲気です。 あのふんわりストレートなヘアスタイルにはとてもあこがれたものです。 週刊の少女マンガ雑誌で、ここまで丁寧に、落ち着いた楽しい話を 描けていたなんて、そちらも驚くばかりです。
というわけで、幼いころの私の心をアメリカン・カントリーな雰囲気で 満たしてくれたもうひとつの作品、『プリティー・ロック』については 次のページで・・・。
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