『あこがれ・二重唱』 作者:佐藤まり子 原作:佐和みずえ 掲載:「なかよし」昭和55年10月号〜昭和56年3月号
私の記憶が正しければ、この作品は連載前月の「なかよし」予告では 「あこがれ四重奏」というタイトルだったような気がします。 あるいは連載中がそのタイトルで、単行本化のときにタイトル変更に なったか・・・いや、やっぱり予告だけだったかもしれません。 とにかく「あこがれ四重奏」というタイトルだったと思うのです。 (「あこがれ」の部分も違かったかなぁ?「ときめき」とか「やさしさ」とか だったような気がしてきました)
原作者の佐和みずえさんというのは、「キャンディ・キャンディ」で おなじみの水木杏子さんのことです。 このかたは他に「香田あかね」というペンネームも持っていて、 まつざきあけみさんの「こしゃくなムッシュー」とか「ゆうれいにプロポーズ」 の原作者でもありました。
このコーナーで書いた「あいLOVEポピーちゃん」の原作者の 「加津綾子」さんというのもこのかただったと思います(笑)。すごいな。 何でこんなに使い分けてたんだろ??? あと「名木田恵子」さんというのも、このかたと同一人物でして、 今はこの名前が一番使われていますね。
さて、佐藤まり子さんは、私の中で、初めて単行本をコンプリートし始め たほど、好きになった漫画家さんでした。 (結局「とんねるミッキーズ」「どろろんパッ!」あたりから「なかよし」 そのものから興味が少し離れていってしまって、コンプリートは 達成しなかったたのですが。 そういえば「どろろんパッ!」もタイトルが予告では違ったと記憶しています)
最初にハマったのは「シュガーポットのないしょ話」という作品でした。 その前にも「ラブ・ケーキもう焼けた?」とか「ほほえみ白書」とか、 「春が見える部屋」とか「ケーキハウスはお日さま色」なんて作品が あって、可愛い絵柄と女の子らしい話の展開で、佐藤まり子さんには メチャクチャ好感を持っていました。 「シュガーポットの・・・」はホントに究極の「女の子らしいお話」で、 お菓子作りが得意だけれど赤面症の女の子・真雪が、 5年間片思いしているあこがれの森島先輩が高校を卒業する前に、 バレンタインのチョコを渡せたら・・・という内容なんですが、 絵柄もストーリーも可愛くて、しかも、バレンタインに向けての チョコケーキやトリュフのレシピなんかが載っていたりして、 もう一気にファンになってしまいました。 単行本化されたときは発売日を楽しみに、本屋さんに駆け込んだもの です。
タイトルも、表紙も、設定も、全て可愛い!!のドツボです。 彼女にしか見えない妖精(ルディ)が出てきたり、赤面症でも火の前なら わからないよ、という友達の助言で、ファイアーストームの前で、 好きな先輩とフォークソングを踊ったり、「すみれの花のしおり」が 出てきたり・・・ラストまで、丁寧に真雪の心情が描かれていきます。 とても好きな作品で、お風呂の中に持っていってまで読んでいました(笑)
この作品のころから、人気を不動のものにした佐藤さんの2弾目の 連載ものとして始まったのが、この「あこがれ・二重唱」なのです。 1弾目は、以前、峡塚のんさんの「あいLOVEポピーちゃん」の ところで書いた「サニーあなたの番よ!」です。 でもこれは対象年齢が低めの作品で、毎回話も短く、なんとなく 教育テレビの道徳ドラマのようでした。
なので、「あこがれ・二重唱」が、本当の佐藤さんの出世作といって いいような気がします。
内容は、双子の中学2年生、麻衣(姉)と結衣(妹)が主人公。 麻衣は活発で、サバサバした女の子。その反面、お琴が好き。 結衣はポプリ作りが趣味の、ちょっと惚れっぽい女の子体質。 二人の家は、ネコの専門店をしています。
一話目は、麻衣が学校から帰ってくると、結衣と共同で使っている 部屋の中が花びらであふれかえっていて、びっくり!! というシーンから始まります。 結衣が、町内会のレセプションで使われた花を全部持ち帰って それを全部むしって、ポプリに使うため広げていたというわけです。
ちゃっかり者の結衣に乗せられて、花びらを乾燥させるのを手伝って しまう麻衣ですが、ハッと我に返り、結衣が、麻衣と一緒に通っている お琴のお稽古をサボったことを叱ります。 それを両親には黙っている代わりに、と、ポプリをひとつわけてもらう ことになります。 あこがれの一ノ瀬先輩に渡したいと思ったのです。
麻衣は、3年生の一ノ瀬先輩が好き。 そして結衣にも好きな男子がいて、それは隣のA組の堀川君。
結衣は堀川君にプレゼントするために、とっておきのポプリを製作中 なのですが、なかなか納得のいく香りに仕上がりません。 そしてけっこうケチで(笑)、麻衣に分けるポプリとして、 あれもダメこれもダメと、結局小さな猫型のサシェ(リラの花のポプリが 入っていました)をくれるのでした。 私としては、もうこの初回から、「私はダンゼン麻衣ちゃんが好き!」と 思い、応援し始めましたね(笑)。 子供が生まれたら「麻衣」と名づけようと思ったほどです。 (双子が生まれたら「麻衣」「結衣」とつけようとも思ってましたが)
さて、内容は色々端折りまして、結局結衣の初恋は実らず、 そのあとも恋を転々と渡りますが、うまくいきません。
麻衣のほうは、結衣にもらったサシェの香りを早速一ノ瀬先輩が 気づいてくれます。 そのうちに、ネコを飼いたいというお客様の家に子猫を届けに 行くことになるのですが、それが運よく(都合よく?)一ノ瀬先輩の家 だったのです。 が、そこで花瓶を割ってしまうという大失態をしてしまい、泣き崩れ・・・。 と思っていたところへ、一ノ瀬先輩から電話が来て、呼び出された麻衣が 失恋覚悟で行くと、なんと先輩のほうから告白してくれて・・・ サシェのおかげか、初恋が実るのでした。
このときほど私が満足した回はありません(笑)。 嬉しかったですね〜〜〜〜。 電話が来るところで話が終わってしまい、この先どーなるの!!と ひと月「なかよし」の新号が出るのを待った甲斐がありました。
じゃあ結衣のほうはどうなるのかといいますと、失恋続きで、 麻衣に八つ当たりしてしまい、二人は仲たがいしてしまいます。 でも、誕生日が近づき、あっさり仲直りしてしまうのですが(笑)。 私だけの見解だと思うのですが(ええ、それでいいのですが(笑))、 麻衣はお調子者ではありますが、けっこう結衣に気を使ってあげる 場面が多いのですよ。 初恋相手の堀川君が転校してしまって、「結衣に手紙を書いてあげて!」 と心から願ってあげたり、励ましたり、隣町で堀川君を見かければ 急いで結衣に教えてあげたり。 他の恋のときでも、結衣に相手を紹介してあげてデートプランを立てて あげたりと、色々してあげているのです。 なのに結衣は、勝手に麻衣と一ノ瀬さんの仲に嫉妬したり、 麻衣が紹介してくれた彼との失恋に腹を立てて麻衣のせいにしたり、 親友と仲良くしているところを麻衣に見せ付けたり・・・。 けっこうイヤな女じゃないですか???
ですが、この作品は読んでいくにつれ、どちらかというと結衣が主人公の ようになってしまって、ちょっと残念でした。 子供だった私は、単行本を手に、麻衣と結衣、どちらのコマが多いか、 数えたりもしたものです(←バカ)。 ええ結衣が多かったですよ、はい(苦笑)。
ラストでは、結局結衣は、いつも憎まれ口をききながらも、 一番身近にいた、同じクラスの男子と結ばれます。 麻衣のほうは、一ノ瀬先輩が進学先を自分が情熱を燃やしている ラグビーの強い高校に行くため、大阪の高校を選んだことを知り、 ショックを受けますが、最後には受け入れ、待つことにします。
そして、一ノ瀬先輩を見送る新幹線のホームのシーンがラストの コマです。 何となく、麻衣のほうが大人になってしまっている感じです(笑)。
このラストのコマは、一ページすべてがこのシーンと、ナレーションの ようなモノローグだけです。 子供心にも、最終回のこのコマでは、泣いてしまったものです。 「なかよし」本誌を何度も何度も読み返したのを覚えています。
だからこそ覚えていることなのですが、このラストのモノローグ、 本誌での掲載分と単行本とでは、まったく違っているのですっっ!!! 本誌のほうの言葉をすっかり忘れてしまっているのが自分でも 不甲斐ないのですけど、私としては、本誌に掲載された文章のほうが 感動的で、好きだったことだけは確かです。
とまぁ、こんな作品なのですけれど、麻衣ファンだった私としては もっと麻衣にも個性を!!と思ったものです。 だって、結衣のポプリの世界がどんどん人気になっていったので・・・。 といいつつ、ちゃっかりポプリの材料をスーパーのスパイスコーナーとか 原宿の「生活の木」なんかに買いに行っちゃったりしましたが(笑)。 このころに買い込んだスパイスの数々が、まだ私の机のイスの下の スペースに並んでいます。 が、もうイスの前にいろいろ雑誌なんかが積まれてしまっているので、 今ではイスを引き出すことすらできなくなっているので、これらの小瓶の スパイス陣が、今どんな状態になっているのやら、もう怖くて怖くて 「開かずの扉」状態です(苦笑)。 虫とかわいてたらどーしよーーーー怖いよーーーーーーーーー!!!
さて、この作品のおかげで「生活の木」はかなり儲けたことと思います。 あ、そうじゃなくて、ポプリ少女が増えたことと思います。 ローズヒップティーなんかも作ってみましたよ。 激マズでした(笑)。 そんなニガい体験をした読者は私だけではないはずです。
佐藤まり子さんは、こうした女の子があこがれる趣味的なものを いつも提供してくれました。 一番はやはり「料理」ですね。 佐藤さんの作品には、料理のレシピが入っているものがいくつか あったのです。 それらは全て単行本「シュガーポットのないしょ話」に収められていると 思います。 先に書いたようなチョコや、ポトフ、ゼリー、レアチーズケーキなどなど、 あこがれては試したものです。 一番試したかったのは「ケーキハウスはお日さま色」の中の 「甘くないケーキ」だったのですが、我が家にはオーブンなどという ハイカラなものがなく、しかも子供にほうれん草やベーコンを炒めるなんて コトをさせてくれるような心の広い母親でもなく、 そもそもベーコンって何???くらいのどうしようもない家だったので、 この「甘くないケーキ」は挑戦できませんでした。 しかし、20年以上経った今もって我が家にはオーブンがなく(さすがに ベーコンは食するようになりましたが)、今更いろいろ手順を踏んで 作ってみようなどという気も起こりません。 作られた方、いるんでしょうか? 作られた方、成功しましたか? でもあれって・・・・・・キッシュでしょ?単なる。あれ、違う???(笑)
ところで、関係ないのですけど、私は佐藤まり子さんや高橋千鶴さん、 峡塚のんさんが活躍していた時代の「なかよし」が一番好きです。 いでまゆみさんとかね。 私が「なかよし」を熟読し始めた頃は「キャンディ・キャンディ」や 「スポットライト」が連載されていた頃で、いがらしゆみこさんや 里中満智子さんはもう「なかよしの顔」といえる存在でした。 里中さんはしばらくして「あかね雲」を最後に「なかよし」を卒業 なさいましたが。
佐藤まり子さんたちの少し前だと、そんなお二人や、まるやま佳さん、 別府ちづ子さん、原ちえこさん、神崎順子さん、まつざきあけみさん 鈴賀レニさんあたりが大活躍していました。 志摩よう子さん、曽祢まさこさん、高階良子さんももういらっしゃいました。 たかなし・しずえさんももうデビューなさってた頃でしょうか。
佐藤さんや高橋千鶴さんのデビューによって、「なかよし」はかなり カジュアルな感じになったと思います。 明るくて身近なストーリーが増えたというか。 それでいて話がしっかりしていて、夢も見させてくれるし、 読み応えもあるし、絵がうまい! (神崎順子さんとか鈴賀レニさんも軽めの話を描いてたんですけど、 どこか古臭さがあって、まだまだ昭和40年代の雰囲気が残ってた感じ です。でも何冊か単行本持ってますけど(笑)) 高橋千鶴さんは初期はそんなにカジュアルじゃなかったんですけど、 いつの間にか「なかよし」きってのアイビー系の漫画家さんになって いましたね〜。
やがてあさぎり夕さんが少し遅れてデビューして、最初は「なかよし」とは 思えないような奇怪&ファンタジック(?)なテーマと荒々しい絵柄で、 これはちょっとついていけるかしら・・・?なんてどーでもいいことを 思ってたんですけど、「ちょっぴり危険なラブ講座」という短編で けっこう面白い個性がハッキリ出てきました。 IQ、なんて言葉も、この作品で初めて知りました(笑)。 まぁどことなく、まつざきあけみさんを踏襲してるな〜〜〜という気が しないでもなかったんですが、今読むとやっぱり何か、まつざきさんっぽい んですよね(笑)。 「サントロペは大混戦」とか「ごきげん?アピ」にキャラがよく似ています。 で、あさぎりさんはこのままコメディでいくのかな〜〜〜〜と思ってたら 「花詩集こでまりによせて」なんていうベッタベタな女の子漫画を 発表して、瞬く間に「きらら星の大予言」という連載を始めてしまいました。 (私も予言を見たいものだと、壁に向かって逆立ちしたものです(笑)) もうそこからは一気にスターダムでしたね。 でも私は、「りぼん」の田渕由美子さんのような女の子らしい漫画は けっこう好きだったのに、どうにもあさぎりさんの描くヒロインの子の、 ジメジメ〜〜〜〜ッとしたところが受け入れられず、苦手な作家さん でした(って、スミマセン!大汗) 「あいつがHERO!」の若菜とか。「こっちむいてラブ」も。。。 なんであんなにいつもメソメソしてるのやら・・・? なんで男キャラまで泣いてしまうのやら・・・・・・??? で、で、でもでも、あさぎりさん自身も作家さんの近況コーナーで、よく 「ボクの描く主人公は泣いてばっかり。ええい泣くな!」と、ご自分の キャラ(若菜とか)に向かって蹴りを入れたりしてたんですよ〜〜〜!!!
え〜〜と(汗)、そんなわけで、私はサッパリしていて、かわいらしさが あって、肩が凝らなくて、でも安定感のある、佐藤さんあたりが 大好きだったわけです。
一度、「なかよし」の付録で、漫画家さんたちの声が入ったソノシートが ついてきたことがありました。 たかなししずえさんはイメージ通りのトロ〜ンとしたしゃべりかたで、 高橋千鶴さんは普通の明るいお姉さん、という感じの話し方で、 いがらしゆみこさんはやっぱりどこか風格のある学校の先生のような 話し方でした。 そして、やはり佐藤まり子さんはかわいらしい、というか、いかにも お菓子作りが得意そう!といった話し方だったのを覚えています。 ぶりっ子というわけでもないんですよね。 もう一人、可愛くて、お料理が得意そうな、漫画家さんとは思えない 雰囲気だったのが「わんころべえ」のあべゆりこさんです。 このあいだ知ったのですが、「わんころべえ」ってまだ連載されている んですね!! あべさん・・・・・・・長谷川町子か。
ソノシート、まだとってあるんですけど、昔のプレーヤーでも 今のプレーヤーでも、なんか音がヘナヘナしてしまって、うまく 聴こえないんですよね。 でもまたいつの日か、針を落としてみたいと思っています。
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