敬愛するカレン・カーペンター


     あまり洋楽には詳しくない私ですが、
     カーペンターズだけはけっこう聴いています。

     幼いころ、まだ父や母と同じ部屋で寝ていたころ、
     日曜日になると、母がラジオを目覚まし代わりに使っていた
     時期がありました。
     そのころ、よくカーペンターズも流れていました。
     まぁ日曜の朝にふさわしい音楽、というイメージですよね。

     そんなこともあって、私にとってカーペンターズのサウンドは、
     とても懐かしく、こそばゆく、幼い頃の甘えた気持ちを
     思い起こさせる、大切な世界なのです。
     「イエスタディ・ワンスモア」の詩の世界と偶然一致するものが
     ありますね。

     それから小学生になって、素敵な洋楽アーティストの一人、、、と
     思っているうちに、ある日、TVを見ていたら速報が流れ、
     カレンが亡くなったニュースを知りました。

     確かその前から、カレンが拒食症で病んでいる、というのは
     ずいぶん話題になっていたように思います。
     それが亡くなってしまったものですから、ワイドショーなどでも
     カレンのことよりも、むしろ拒食症についてのことを、
     連日取り上げていました。

     その頃は子供なりに、カレンの歌声に惚れこんでいたので、
     カレンの死はかなりショックでした。

     話はズレますが、私はGAROと言うグループも大好きなのですが、
     GAROのメンバーのトミーが死んでしまったときにも、
     やはりとてもショックで、しばらく「死を決意する人の気持ち」や、
     「生きていこうと思いつづけること」などについて、
     いろいろ考える日々が続きました。

     カレンが亡くなった時にも、あんなに素敵な歌声を、
     もう人々に届けることができなくなる・・・
     それがどういうことなのか、などについて、考えたりしました。

     それから中学生になり、ベストなどを聴くようになり、
     カーペンターズの曲を全曲そろえたのは、高校生のときです。

     それまで「涙の乗車券」や「遥かなる影」「愛のプレリュード」といった
     ヒット曲からしか得ていなかったイメージが、
     後年のアルバム曲なども聴くようになって、
     ずいぶん変わりました。

     でも、あの暖かいボーカル、哀愁と優しさとが入り混じった
     落ち着いた声は、どのアルバムにもあふれていました。

     あの暖かさはどこからくるのだろう?
     トレーニングでどうにかなるものだろうか?

     そのうち、レンタルビデオ屋さんでアルバイトをしていると、
     アメリカで放送された、カーペンターズをモデルにしたドラマの
     ビデオが入ってきました。     
     早速借りてみたりしました。
     
     そのドラマの中のカレンは、母親の愛情を獲得するために
     必死の、少女の心を捨てきれない女性として描かれている印象
     でした。

     そしてどうやら、あの歌声の暖かさの秘密も、
     そんな感情からくるものだ、という答えを醸し出しているようでした。
     母親に誉められるために必死な感情と同時に、
     少女のままの心を持っているから汚れない声が出せるのだ、
     みたいな・・・。

     それから数年がたち、自分でも歌う機会が多くなり、
     歌うこと、伝えること、いろいろと思い悩みつづけていくうちに、
     今となっては、カレンの歌声の秘密は、
     きっと、そういうことではないような気がしています。

     やっぱり、人柄の温かさ。これに尽きるのではないでしょうか。
     あたりまえのようで、それが一番大事なのだと思います。

     カレンはどんな人だったんでしょうか。
     それを直接知ることは、私にはもうかないません。
     だけど、ライブビデオの様子などを見る限り、
     とてもキュートでチャーミングで、性別も年齢も人種も関係なく
     どんな人にも笑顔で接してくれる、そんな女性のような気がします。

     アメリカ人の感覚が私たち日本人にはわからない部分が多い
     イメージもあるけれど、カレンの感覚は、
     私たちにとても近いんじゃないか?
     そんな気もします。

     もともと持っている声質をどうにかは出来ないけれど、
     あんなふうに、人々の心をあったかくできる、
     誰かの心のほんの一時、よりどころになれるような、
     そんな歌声になれたら・・・と思います。

     子供のころ、目覚まし代わりに聴いていて、今も声を聴くたびに
     あの頃に戻れるタイムマシン・・・
     私にとってのカレンがそうであるように、
     私もどこかで誰かにとってのそんな存在になれたら、
     本当に素敵だな、と思うのです。

     カレンに恥ずかしくない人柄になる必要が、まだまだ大有りです。

     これからも自省を繰り返しながら、
     自分なりに素敵な人柄になっていけたら・・・と、
     最近強く思うのです。

     ちょっと焦りつつありますが。