渡辺俊幸さんとさだまさしさん
渡辺俊幸さんといえば、いまや「利家とまつ」も手がけた 日本を代表する素晴らしい若手音楽家として有名ですが・・・・
私たち「さだまさしフリーク」にとっては、 さださんの曲をアレンジさせたら右に出るものはいない!! という、名バイプレーヤー(?)なのです。
さださんのファンにとっては、もちろん最近の大人の渋みを 増した曲もいいのですが、 やはり感情移入してジーーーンと胸にくるものがあるのは、 70年代から80年代半ばくらいまでの曲ではないでしょうか。
それらの曲の多くは、渡辺さんによるアレンジだったり するのです。 少なくとも、私にとってはそうです。 もちろん、故・山本直純さんや服部克久さんのアレンジも とてもとてもすばらしいものがあります。 ですが、山本さんや服部さんがクラシカルにアレンジしてくれる のに比べて、 渡辺さんのアレンジは、もっと庶民的な優しさがあるのですね。 かしこまらずに聴ける、落ち着いた魅力を感じます。
たとえていうなら、子供のころに、シャボン玉を飛ばしながら 時間がたつのも忘れて、空想世界に浸っていた頃のような気分、 母の田舎に行くときに乗った電車で、ふと見た田園風景の 緑の優しさ・暖かさ、 そんなものを思い起こさせてくれるのです。
さださんの曲には、「まほろば」のようなややストイックで 文学的なものもあれば、 「フェリー埠頭」のような、クラシカルで洋画の世界のようなもの、 「木根川橋」のような少年漫画風のものまで、 本当にバラエティに富んでいます。
その中に共通しているテーマは、 「ささやかな人々の、ささやかな生活」ということだと思っています。 さださんが常に私たちに提示していきたいテーマは、 そういうささやかな生活の中にある、 ほんの小さな幸せだったりするんだと思っています。
渡辺さんのアレンジは、そんなさださんの音楽世界を、 見事に絶妙に演出してくれていると思うのですよ。
私は子供のころから「編曲・渡辺俊幸」という文字を見るにつけ、 渡辺さんというかたが、どんなかたなのか、一度見てみたいと 思ってきました。 あの優しくて、静かで、品があって、 どこか少年の心を忘れていないようなノスタルジックな サウンド、そこから、人となりにとても興味が湧いていたのです。
そうしたところへ、去年、なんとお会いできるチャンスが 巡ってきました。 書き忘れましたが、お顔だけは、さださんのビデオBOXの中の ブックレットなどで拝見していました。 それが、ご本人じきじきにお会いできるチャンスがきたわけです。
お会いする前に、お電話でも少しお話できたのですが、 思っていた通り、とても品があって、物腰がやわらかいかたで、 生意気ながら、とても嬉しく思いました。 (調子に乗って、ずいぶん長いあいだお話してしまったような 気がします。)
たとえああいう優しいサウンドを作る人でも、もしかしたら、 とてもプライドの高そうな、虚勢を張ったかたかもしれません。 そういうことは本当によくあることだと思います。
それが、実際の渡辺さんご本人も、 サウンドの通りに優しげなかただったのです。 背筋をピンと伸ばして、少し中性的な、 おっとりした雰囲気がにじみ出ていました。
そしてまさしく、「少年の心をもった」というイメージのかたでした。
渡辺さんは青山学院に通いながら、
あの有名なフォークグループ・赤い鳥のドラマーを経て、
アレンジャーを志して、海外に渡ったかと思います。 (村上ポンタさんと前後する形で)
ドラマーの知識がある中で、アレンジャーを志すという経緯が もうすでに異色の存在だったそうです。
その後は・・・、実はさださんがグレープを解散した後、 再デビューにあたっては、またグループで、、と思っていたそうで、 その、さださんが考えていたメンバーの中に、 渡辺さんもいたわけです。 ちなみにもう一人メンバー候補がいまして、 そのかたは、これもさださんを語る上では欠かせない パーカッショニスト、宅間久善さんだったわけですが。 この3人でのデビューの考えがあったわけですね。
それを、さださんはソロで行くべきなんじゃないか、と 進言したのが、渡辺さんだったそうです。 そう考えても、さださんのいまの活躍があるのは、渡辺さんの 影響も大きい、といえるんじゃないでしょうか?
こうした話からも、本当に、人の縁とは不思議なものだと 思いますね。 ケンカ別れするケースもあるけれど、 こうして、お互いがいい方向に向かっていく プラスの付き合いかたもあるのです。
私がさださんを好きな理由は、おそらく、そうした 密な人間関係への憧れ、というのもあるような気がします。 さださんを見ていると本当に、いろんな人との縁が絡まって、 ひとつの素敵なワールドを作り上げていて、 本当に有意義な人生に見えるのです。 さださんのスタッフの誰かが昔言ってましたが、 「面白いことが起こりそうだからついていこう、と思ってしまう」 まさにそんな感じです。
私も、そんな人間になりたいと、子供のころから憧れたものです。
それに、渡辺さんを見て、ますますわかったのですが、 素敵な人には、素敵な人が集まってくる・・・・のかも しれませんね。
私が最初に渡辺さんの存在を知ってから早や20年。 あのころはまだそんなに知られていなかった渡辺さんも、 いまや若手音楽家の筆頭です。 どんなに一流になっていっても、あの優しい、子供の心を 持ち合わせたサウンドは、いつまでも健在でいてほしいと思う、 私なのでした。
<※追記:2020年5月>
ありがたいことに、渡辺俊幸さんは、今も毎年、
お年賀状を下さるのです。
パソコンやスマホが普及する中、今も変わらず、
「ハガキ」でのお年賀状を下さることが、私にはとてもうれしく、
毎年の年初めの支えというか、喜びの一つになっています♪
1年の計は元旦にあり、といいますが、渡辺さんからのお年賀状は、
今年も穏やかに、変わらず過ぎていきそうな、
そんな温かな気持ちをいただけるのです。
もちろん直筆ではありませんし、誰にも同じものを送られているような、
統一した事が書かれているのですけど、 でも、前の1年間、どんなご活躍をなさったか、
いま、どのようなお仕事に取り組んでいらっしゃるか、今年の予定はどうか、
指揮棒を振ったり、ピアノに寄り添ったりする素敵なお写真とともに、
とても詳しく書かれています。
最近は音大の教授も務められているそうで、
あぁ、渡辺さんがいるなら、私も受験しちゃおうかしら、
池田理代子さんだってだいぶ経ってから声楽を志して受験して受かってるし
私もまだ、トライして良いんじゃない?・・・などと
ついつい夢を見てしまいそうになります(笑)。
これからもずーっと、お年賀状が届く事を願い続けて
毎日を生きていきたいと思ってます!
この記事を書いた頃よりはるかにベテランになられても、
いつも私の心の琴線に触れる、心揺さぶる旋律を届けて下さる渡辺俊幸さん、
本当にありがとうございます、と、ファンとして告げたく思います。
(Last writing at 2020年5月)
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